Q. 為替取引はどこでどう行われているのか?
A. 中央取引所はない。世界中の銀行が24時間、電子プラットフォーム上で直接売り買いしている。テレビの数字はその取引を集計した値だ。
株と為替の決定的な違い
株式(東証など)
中央取引所が存在する。売り注文と買い注文を一か所に集めて、マッチングする。価格は取引所が管理する。
為替(FX)
中央取引所は存在しない。世界中の銀行・機関投資家がBloombergやReutersなどの電子プラットフォームを通じて直接取引する。1日の取引量は約800兆円。
テレビの数字はどこから来るのか
BloombergやReutersが、主要な大手銀行のディーラーからリアルタイムで「今いくらで売る/買う」という気配値を収集し、その中間値を集計して配信している。テレビや金融アプリが表示しているのはそのデータだ。
「公式レート」は制度上存在しない。ただし東京市場では毎朝9時55分に主要銀行が一斉に注文を出し、その平均が仲値(なかね)として決まる。企業の為替換算や空港両替の基準に使われる。
銀行はどうやって儲けているのか——スプレッド
銀行は「買う価格」と「売る価格」を同時に提示している。この差がそのまま利益になる。
A銀行の提示:
・ドルを買う価格(bid):149.99円
・ドルを売る価格(ask):150.01円
「買いたい方も売りたい方も、どちらでもどうぞ」——A銀行はどちらに転んでも儲かる仕組みだ。
利益が出る仕組み:
B銀行が「ドルを売りたい」→ A銀行に149.99円で売る
A銀行はドルを仕入れた。コスト:149.99円
C銀行が「ドルを買いたい」→ A銀行から150.01円で買う
A銀行はドルを売った。収入:150.01円
①②の差:150.01 − 149.99 = 0.02円の利益
1件あたりは薄いが、1日に何万件も処理すると大きな収益になる。
各銀行はどうやって他行のレートを知るのか
電子ブローキングプラットフォームがある。代表的なのは EBS(CMEグループ傘下)と Reuters Matching の2つだ。主要銀行はこれらに接続していて、各行が今のbid/askをリアルタイムで投稿し続けている。株の注文板(板情報)に近いイメージだ。
各銀行のディーラーがプラットフォームにbid/askを投稿
全参加者がリアルタイムでそれを見られる
有利な価格を提示した銀行に注文が集まる
取引が成立するとレートが更新される
「中央取引所はない」と言いながら、このプラットフォームが事実上の取引所として機能している。また今は大半の取引がアルゴリズムによる自動執行なので、0.001秒単位で最良の相手を探して発注している。
なぜレートが一点に収束するのか
各銀行はプラットフォームで他行の気配値を見て「この辺りにしよう」と決める。ただしそれは協調しているからではなく、ズレると損をする構造があるからだ。
割高に出した場合(市場150.01円のところ150.05円)
他行で安く買えるので、誰も来ない。注文がゼロになる。
割安に出した場合(市場150.01円のところ149.95円)
全員が殺到してドルがすぐ底をつき、損が出る。
この2つの圧力に挟まれるため、各行は自然と市場の気配値に合わせるしかなくなる。加えて今はアルゴリズムが0.001秒単位で全行の気配値を監視しており、少しでもズレた瞬間に裁定取引(割安なものを買って割高なところへ即売り)が走る。人間が判断する前に機械が修正してしまう状態だ。
空港両替が高い理由
インターバンクのスプレッドは0.02円程度だが、空港の両替所は5〜10円の差がある。取引量が少ない・手続きコストが高い・近くに競合がない——この分がスプレッドに上乗せされている。「手数料」と呼ばれているものの実態はこれだ。