お金の基本

Q. 株のPERって何のこと?——「この株は利益の何年分の値段か」を見る指標

A. PERは「今の利益ペースで何年かけて株価を回収できるか」を示す数字だ。PER10なら10年分、PER30なら30年分の利益が株価に含まれている。

まずたこ焼き屋で考える

たこ焼き屋を100万円で買ったとする。この店は毎年10万円の利益を出している。

100万円 ÷ 10万円 = 10年

今の利益が続けば、10年で買値を回収できる。

この「回収にかかる年数」がPERと同じ考え方だ。

株に当てはめると

株でも同じことができる。

株価 2,000円 ÷ 1株あたりの利益(EPS) 200円 = PER 10

「この会社の株は、今の利益の10年分の値段がついている」という意味だ。

PER(ピーイーアール)は Price Earnings Ratio の略で、日本語では「株価収益率」と呼ぶ。

計算式は「株価÷EPS」だが——実際は逆方向に動く

式の上では「株価 ÷ EPS = PER」だが、市場の実態は逆の方向に動いている。

計算としての向き:株価 ÷ EPS → PER(事後的に観察する)

投資判断としての向き:予想EPS × 適切なPER → 目標株価(先に決めて動く)

実際の流れはこうだ。ある会社を担当するアナリストが「この会社の来年のEPSは60円になりそう」と予測する。次に「この成長率・この業種ならPER25が妥当」と判断する。すると目標株価 = 60円 × 25 = 1,500円が導かれ、今の株価と比べて割安か割高かを判断する。多くの投資家がこれをやることで市場価格が動く。

決算発表で株価が動く理由もここにある

パターン①:今期EPSが予想を下回った

予想60円 → 実績50円。予想EPS × PER50 = 2,500円が新しい適正価格になり株価が下落する。

パターン②:今期は良かったのに、来期ガイダンスが低かった

今期EPS:予想60円 → 実績62円(予想超え)✓

来期ガイダンス:市場予想80円 → 会社発表70円 ✗

「今期は良かった」のに株価が下落する。高PER株は将来の成長を織り込んでいるため、来期の期待が崩れると一気にPERが圧縮される。

株価が動くのは「現在の利益」ではなく「将来の予想の修正」に反応しているからだ。PERが高い成長株ほど、この感度が高くなる。

PERが高い・低いはどういう意味か

「PERが低い方が安くてお得」と思いがちだが、そう単純ではない。

PERが低い(例:PER8)

「この会社はこれ以上成長しない」と市場が見ている、または本当に割安で買い時、のどちらかだ。成熟した大企業に多い。

PERが高い(例:PER50)

「この会社は将来どんどん利益が増える」と市場が期待している。たこ焼き屋が毎年売上を倍にしていくなら、50年分払っても安いかもしれない。成長中のIT企業などに多い。

つまりPERが高い = 割高ではなく「成長への期待が高い」と読む方が正確だ。

PER50で買っても、後から「PER5で買った」になれる

高PERで買う人は「今の利益」ではなく「将来の利益」を見ている。具体的な数字で確認しよう。

今:株価 1,000円 ÷ EPS 20円 = PER 50

3年後:会社の利益が10倍に成長して EPS 200円になったとする

振り返ると:1,000円 ÷ 200円 = 実質 PER 5

「PER50で買った」のに、成長が届けば「PER5で買ったのと同じ結果」になる。高PER株を買う人はこの賭けをしている。

裏返すと——成長が期待を下回ったときのリスク

利益が10倍どころか2倍にしかならなかった → 実質PER 25(まだ高い)。成長が来なければ株価は大きく下落する。高PER株が決算で「予想を少し下回っただけ」で暴落するのはこの構造だ。

株価の上昇は「EPS成長 × PER変化」の掛け算

EPS(利益)が伸びても、市場のPERが同時に縮小すると株価は思ったほど上がらない。前のセクションの数字を使って比べてみよう。

購入時:株価 1,000円、EPS 20円、PER 50

3年後:EPSが3倍に成長 → EPS 60円

このとき株価はいくらになるか?——市場が付けるPERによって変わる。

市場がPERを維持(50→50)

EPS 60円 × PER 50 = 株価 3,000円 → 購入時の3倍

「成長はまだ続く」と市場が信じているとき。EPS成長がそのまま株価上昇になる。

市場がPERを引き上げ(50→75)

EPS 60円 × PER 75 = 株価 4,500円 → 購入時の4.5倍

「成長が予想を上回った」と市場が判断したとき。EPS成長以上のリターンになる。

市場がPERを圧縮(50→25)

EPS 60円 × PER 25 = 株価 1,500円 → 購入時の1.5倍

「成長フェーズが終わった」と市場が判断したとき。EPS3倍なのに株価は1.5倍止まり。

自分の「実質PER(購入価格 ÷ 現在のEPS)」は良くても、市場がPERを下げてしまえばリターンは削られる。これがPER圧縮(multiple contraction)と呼ばれる現象だ。

PERで比べるときの注意点

業種が違うと「普通のPER」が違う——銀行はPER10前後が普通、IT企業はPER30〜50でも普通、という具合に業種ごとに相場がある。業種をまたいだ比較は意味が薄い。

赤字企業はPERが計算できない——利益がマイナスだと「何年で回収」が成立しない。スタートアップや投資フェーズの会社はPER以外の指標で見る。

PERは「同じ業種の会社同士を比べる」ときに一番使いやすい。A社はPER15、B社はPER10なら、同じ業種なら「B社の方が割安かもしれない」と読めるといった具合に。

「市場予想」は全員に見えていない

「市場予想80円 vs 会社ガイダンス70円」と書いたが、この「市場予想」は全員が同じ数字を見ているわけではない。

証券会社やリサーチ会社のアナリストが個別企業の予想を出し、それをBloomberg・Refinitivなどのデータベンダーが集計した平均値が「コンセンサス予想」だ。年間300〜400万円の有料サービスで、基本的に機関投資家・証券会社専用の情報だ。個人投資家は決算直前にニュースで間接的に知る程度になる。

大型株:情報格差がある

複数のアナリストがカバーしており、コンセンサスが存在する。機関投資家はそれをリアルタイムで見て動いているが、個人には見えない。

中小型株:コンセンサス自体がない

時価総額が小さい企業はアナリストがカバーしないことが多く、「市場予想」が存在しない。全員が手探りになる分、個人でも割安株を発掘できる余地がある、と言われる理由でもある。