Q. プライマリーバランスってなんだ?——「利払いを除けばトントン」の意味
A. 「過去の借金の利払いを除いた収支」のこと。黒字なら今年の支出は自力で賄えているが、過去の借金の利子は別に払い続ける必要がある。財政健全化の「入口」であって、ゴールではない。
2024年度のPBは▲3.9兆円まで縮小。2009〜2019年の▲8〜27兆円赤字から、インフレによる税収増で急速に改善している(内閣府・国民経済計算、国・地方ベース)。
① 歳入 vs 利払除く歳出
歳入(緑)が増えているのはなぜ?
名目GDPの拡大により税収が増加。2022〜24年は円安・インフレ効果も加わり歳入が急増。
利払除く歳出(青)が増えているのはなぜ?
高齢化による年金・医療・介護費の増大が主因。景気や金利とは無関係に増え続ける構造的な圧力。
財政赤字のもう一つの要因が過去の借金の利息(利払費)だ。金利上昇で利払費が再び増え始めており、ここが今後の焦点になる。
② 利払費の推移
利払費が再び増え始めている
超低金利で2022年に一時8.4兆円まで縮小したが、日銀の利上げで2023〜24年にかけて増加に転じた。歳入の増加ペースを利払費増が上回ると、改善しつつあるPBが再び悪化に転じる。
出典: 内閣府 国民経済計算年次推計 付表6(2)(国・地方ベース、社会保障基金除く)。1994–2024年の実績値。
数字で見ると一目瞭然
① PB大赤字の時代(2009年頃)
経費も払えず、利払いも積み上がる二重苦。毎年借金が約38兆円ずつ増えていた。
② PBが▲4兆まで改善した今(2024年頃)
経費の赤字は大幅に縮小した。残る赤字は経費の不足分(▲4兆)+利払い(約9兆)。
③ 財政赤字ゼロの状態(仮定)
PBの黒字が利払費と同額になって、ようやく財政赤字がゼロになる。借金の元本が初めて増えない状態だ。
※ ①②は内閣府 国民経済計算(国・地方ベース、社会保障基金除く)の実績値(概算)。③は仮定。
「黒字になった」で安心してはいけない理由
プライマリーバランスが黒字になっても、借金が減るわけではない。過去に積み上がった約1,100兆円の元本は残ったままで、その利子(年間約9.6兆円)も払い続けなければならない。
借金を本当に減らすには
プライマリーバランスの黒字幅が利払費を上回って初めて、借金の元本が減り始める。現状はようやく「利子の一部を自力で払えるかどうか」という段階だ。
「PB黒字化」はニュースで財政改善の指標として使われるが、それは1,100兆円の借金が減り始めたという意味ではない。
日本の状況
日本の国・地方PBは長年赤字が続いてきた。インフレによる税収増で当初予算ベースでは改善傾向にあるが、毎年組まれる大型補正予算が実績を大きく押し下げるパターンが繰り返されている。令和7年度(2025年度)の当初予算ベースでは▲4.5兆円の赤字だ。
政府はもともと「2025年度にPB黒字化」を目標に掲げていたが、達成できず、目標自体を「単年度ではなく数年単位で見る」という形に緩めた。ただしPB黒字化は、利払費も含めて税収で賄える「財政健全化」とは別物だ。金利上昇で利払費が膨らめば、さらに改善が難しくなるリスクもある。
まとめ
プライマリーバランス黒字=「今年の経費は自分で払えるようになった」。でも過去の借金(約1,100兆円)の利払いは別途発生し続ける。黒字化はゴールではなく、長い返済への入口だ。