Q. 日銀はどうやって金利を操作しているのか?——付利と政策金利の仕組み
A. 「付利(ふり)」という仕組みを使っている。銀行が日銀に預けているお金に利息をつけることで、世の中の金利全体を動かしている。
大前提:銀行には「常に一定額を日銀に預けておく義務」がある
日本には準備預金制度という法律上のルールがある。銀行は顧客から預かっている預金残高の一定割合(法定準備率)を、必ず日銀当座預金に積んでおかなければならない。
例:ある銀行の預金残高が1,000億円で法定準備率が0.1%なら、最低1億円は常に日銀当座預金に置いておく義務がある。
銀行は毎日、振込や融資のたびに日銀当座預金の残高が変動する。この残高が不足しそうな銀行と余っている銀行が生まれる——ここから次の「コール市場」の話につながる。
その次:コール市場という「銀行同士の一夜貸し」がある
全国の銀行は毎日、振込や融資のせいで日銀当座預金(日銀に預けている準備金)が過不足する。足りない銀行と余っている銀行が「翌日返す」約束でお金を貸し借りする場所がコール市場(インターバンク市場)だ。
このとき発生する金利を無担保コール翌日物金利という。日銀の「政策金利」とは、実はこの金利を指している。
付利が「金利の床」を作る
日銀は全銀行の日銀当座預金に利息を払っている。これが付利(ふり)だ。
なぜ付利がコール金利を決めるのか?
付利が0.5%なら、銀行は「日銀に置いておくだけで確実に0.5%もらえる」状態になる。そうなると誰も「0.5%未満では他の銀行に貸さない」——この空気が市場に自然にできあがる。
付利の水準がコール金利の下限になる、これが政策金利の実態だ。日銀は命令でコール金利を決めているわけではなく、銀行の「どうせなら日銀に置いておこう」という経済合理性を使って間接的に操作している。
政策金利を上げると、何が起きる?
付利↑ → コール金利↑ → 銀行のお金の調達コスト↑ → 住宅ローン・企業融資の金利↑ → 借りにくくなる → 消費・投資が冷える → インフレが落ち着く
逆に付利を下げれば借りやすくなって景気が上向く。日銀はこの「付利」という一点を動かすだけで、世の中の金利水準全体を動かしている。
ニュースで「日銀が利上げ」と聞いたとき、それは「付利を引き上げて、コール金利の下限を上げた」という意味だ。住宅ローンや預金金利が動くのは、この連鎖の結果として起きる。
もうひとつの操作——市場に流す「お金の量」を変える
付利は「コール金利の床(下限)」を設定する仕組みだ。もうひとつの手段は、コール市場の需給そのものを動かすことだ。
日銀が市中銀行から国債を買い取ると、代金として日銀当座預金が増える。銀行全体の当座預金の合計——つまりマネタリーベース——が膨らむ。すると:
逆に日銀が国債を売れば(市場から資金を吸収する)、当座預金が減り「借りたい銀行」が増えてコールレートが上がる。この操作を公開市場操作と呼ぶ。
「コール市場で借りればいいのでは?」という疑問
確かに当座預金が不足した銀行はコール市場で借りれば済む。ただし金利コストがかかる。日銀が国債を買って当座預金を補充してくれれば、その借入コストが不要になる分、銀行は貸し出しの採算が取りやすくなる。量的緩和でコールレートがゼロ近辺まで下がったのは、この需給変化がシステム全体に波及した結果だ。
ただし調達コストがゼロになっても「返せそうな借り手がいなければ貸さない」——アベノミクスでマネタリーベースを9倍に増やしたのに貸出が伸びなかったのはここが限界だった。
まとめ
日銀には金利を動かす2つの手段がある。①付利——日銀当座預金につける利息でコール金利の「床」を設定する。②公開市場操作——国債の売買でマネタリーベースを増減させ、コール市場の需給を動かす。現在は①が主役だが、量的緩和時代は②を極限まで使い切った。